*婦人科医療の利用のし方

1 はじめに

産婦人科にかかるということは、歯が痛いから歯医者に行く、風邪で熱っぽいから内科に行く、というのとはかなり違い、 私たち女性にとっては多かれ少なかれある種の決心を必要とすることです。 性器という羞恥心につながる場所の診察ですし、必要な検査として内診もあり、「病院にかからなければならない」ことが私たちに、 ストレスを与えていることは、ほぼ間違いないことです。 病院選びそのものにも多くの人が苦労しており、「たんぽぽ」にはそういった体験談が、日頃からたくさん寄せられています。

産婦人科とは、そのような気苦労を経て足を運ぶ場所ですから、診断と治療に関しては、良好に進んでほしいものです。 ところが現実には、医療に満足を得ていない人が少なくありません(「たんぽぽ」会員に対して「医師の説明に対する満足度」を 聞いたアンケートでは、「満足」と感じている人は43%と半数を割り込んでいます)。

慢性疾患であるために短期間での解決が難しいのは、体験者であれば多くの人が知っていますが、 であればこそ医療には適切な支援を求めたいのに、うまくいかないばかりか、「傷ついた」と訴える人も少なくありません。 治療法の選択などの各論で悩むならまだしも、どうにもこうにも医師とほとんどコミュニケーションができない、 と嘆く人もいることは、単に婦人科疾患の問題であるばかりでなく、実は社会全体にかかわる問題の一つではないでしょうか。

このような状況下で、患者が「よい医療」を得ていく道は、あるでしょうか?  結論からいえば、私たちは「もちろんある」といえます。医師たちも、当然ながら「よい医療」をめざしているに違いないのです。 ところが残念ながら、医師たちの考えるよい医療と、患者の考えるよい医療には、食い違いが生じやすいようです。 医師たちは多くの場合、患者が受けるであろう利益、不利益を自分はよく知っているのだから (それが本当に正しいかどうかは不明ですが)、全面的に自分に任せてほしいと考えるようです。 これに対し、患者は「私のこの悩みを知ってほしい、これを解決してほしい」と、 あくまで自分自身の悩みに寄り添いながら適格な方針をたててくれることを望んでいる傾向があります。 心構えというかスタンスというか、そのあたりに根本的な違いがあるようです。 しかし、私たちの考えを医師たちに伝え、 医師たちの考えを知り、そこでのコミュニケーションが過不足なく行なわれるようになれば、 「よい医療」は必ずや実現するはずです。諦めることはありません。

2「いい病院」というものはあるか?

「いい病院はありませんか?」初めて「たんぽぽ」にこられる方の半数近くがこの質問をもっていらっしゃる実感をもっています。 この質問に対し即答するなら「誰にでも合うようなオールマイティーな病院、名医などはいません」ということになります。 その答えでは身もフタもない、と思われるかもしれませんが、事実です。患者と医師の相性もありましょう。 患者が望んでいる医療の質というものがありましょう。医師の得意としている技術や方法もありましょう。 それらのうち、どの部分がどの人に合うかなど、これは断片情報からだけでは、第三者にはまったくわからないことです。

また、「たんぽぽ」で交流のあるドクターは何十人もいらっしゃいますが、 そのうちの特定の医師を紹介するようなことをして多くの患者が殺到すれば、誰にとっても時間は有限ですから、 その医師の行う医療の質の低下につながりかねません。ですから、私たちは医師の紹介ということは、基本的には行いません。 電話相談などで、症状があまりに激しいのに現在の主治医の治療方針下で、改善どころか悪くなる一方であり、 なおかつ病院が見つからないとか、或いは主治医から強引に手術日を決められてしまって困っているなど、 緊急に医療機関を必要としている場合に限り、それも、その方の居住地域に関する情報を相談員がもっている場合に限ってのみ、 ご紹介しているのが実状です。

なお、私たちも、これまでのやり方でよしとしているわけではありません。 「たんぽぽ」の趣旨としている自助活動を、病院選びにももっと活用できないかということで、会員を対象に、 病院体験を多項目にわたって聞く「病院アンケート」を実施し、それをデータベース化して、会員の問合せに対し、 新しい情報提供をできるようにしています。但し、病院評価というものは大変難しく、数値化はなかなかできないものですから、 ランク付けをしての病院情報ではありません。個々人の体験、印象に基づくものであることを前提としてご利用ください。

3 病院の選び方

「たんぽぽ」には、自分で病院を選ぶとき何を目安にしたらよいだろうか、という相談もよくあります。 医療機関の種類には大別して「大学病院」「総合病院」「手術・入院設備のある個人病院」 「手術・入院設備のない個人医院(クリニック)」などがあり、また、「大学病院」「総合病院」にはそれぞれ、 公立もあれば、民営もあります。このうちどれがよいかということは、一概にはいえません。それぞれにメリット、 デメリットがあるのは、確かなことだからです。

「たんぽぽ」では、電話相談を設けており、遠方からの相談者もいらっしゃいますが、 そこで必ずアドバイスすることは、「今までの病院に満足していないなら、次は、違うタイプの病院へ行かれたほうがよい」、 ということです。大学病院しかかったことのない人なら、個人病院とか一般の総合病院に行ってみるとか、 或いは色々なタイプの病院へ行ったが今まで男性医師にしかかかったことがなかった人なら女性医師を探してみるとか、何であれ、 これまでの病院、医師と違う点のある病院へ行ってみることをお薦めします。似たようなタイプの病院は、 似たような方針であったり、似たようなタイプの医師が集まっていることが多いものです。 大病院のベルトコンベア的な医療に不満であった人が、個人医院に行ったら十分時間をかけて相談できてよかった、 というような体験談は、「たんぽぽ」では、よく聞かれます。もちろん、個人病院が必ずよいわけではありません。 家から近いというメリットだけで個人医院を選び、納得いかずに別の医療機関を探すなら、隣の個人病院に行くのではなく、 今度は大きな病院へ行ってみたほうがよい、ということもおおいにありうるでしょう。

病院選びの方法として、もう一つ提案したいのは「漢方療法」の項でご紹介している、漢方薬メーカーに問合せて、 治療に漢方薬を取り入れている病院を探す方法です。 「漢方薬を試してみたいけれど、どこに行けばいいかかわからない」という方も多いので、参考にしてみてください。

 

 

5 受診の前に

診察では、特別な場合を除き、診断に必要な情報を医師に提供するために、問診から始まります。 医師から聞かれたら過不足なく答えられるように、あらかじめメモをつくって持参すると役立ちます。

・最終月経がいつからいつまでであったか
・通常の月経周期と、周期に変化があったかどうか
・主な症状、その他の症状
また健康を害するような生活環境の有無、既往歴(ほかの病気の体験)、他院への受診の有無などを聞かれる場合もあります。 記憶だけを頼りにすると、長いプロセスなどは、うまく説明できないこともあるでしょう。 受診用の専用ノートやダイアリーをつくり、月経周期や症状などとともに書いておくと、便利です。 簡潔に説明されると、医師も判断しやすいものですし、また、時間も効率よく使えますから、 私たちも同じ時間内でスムーズに質問できるでしょう。


6 医師への質問

医師から治療法の説明を受けるときは、以下のポイントを確認し、足りない点、分からない点などは、自分から質問しましょう。
・選びうる治療法それぞれの目的とスケジュール、治療の危険性や副作用
・医師が勧める治療をした場合としなかった場合のメリット、デメリット
・ほかの治療法のメリット、デメリット
まったく治療をしなかった場合どうなると予測されるか、そのメリット、デメリットこれらを過不足なく確認したのち、 ではどの方法を選ぶのか、という「相談」が必要です。
医師の薦める治療法をただ鵜呑みにして、それを行ったときのデメリットを確かめたり、 たとえば薬なら副作用が起きたときどうするかなどの「相談」をせずに帰ってくることは、後日、 あなたのからだに影響の及ぶ可能性のあることですから、よくよく注意をして、避けなければなりません。
医師にとってあなたは毎日大勢を診察しているうちの一人ですが、あなたにとってはたった一つの大切なからだなのですから、 慎重にしてしすぎる、ということはないのです。 しかし、医師は大変多忙で、後続の患者も待っているでしょうから、質問は効率よく行うようにしましょう。

質問するときは、予め聞きたいことをメモしていくのがよい方法です。 また、質問や相談をするためには、本や「たんぽぽ通信」の情報などから下調べをして臨むとよいでしょう。 「本でこう読んだのですが」という質問を嫌う医師も、中にはいます。 患者は専門家ではありませんから、場合によっては情報を誤読している可能性もありますが、それも含めて、 患者の側は十分な理解をしたいのですから、質問に際して臆することはありません。 しかし、ケンカをしてしまっては元も子もないですから、少しチエを使いましょう。 たとえば、「初めて親に病気を打ち明けたら、非常に心配して色々私に聞いてくる。こんな質問もあったが、先生どうなんでしょう?」 といったふうに、芝居を打つ手もあります。これは、親だけでなく、姉妹、夫、恋人、色々な人を登場させてのバリエーション、 少しシチュエーションを変えての応用も可能です。

 

7 セカンド・オピニオン

診断技術、治療の技術とも進歩し、また一方では、それらについて病院間格差が生じていることを患者も知る時代となりました。 それだけでなく、医療というものは、実はきわめて「ケース・バイ・ケース」のことが多い、ファジィなものです。 となると、たった1ヵ所の、たった1人の医師の意見だけで医療を選んでいくことのほうが、現実的でないと考えられます。 他の先進国においても、セカンド・オピニオン(他の医師の意見)を聞く、具体的には、他の病院にかかる、 ということは一般的に行われています。これは、自信を持って、前向きに行ってよいことなのです。


8 カルテ、検査データなどの個人情報

カルテや検査データなど、個人の診療記録については、 カルテ開示を定める法律をもつ他の先進国(アメリカ、カナダ、イギリスなど)並みに、 求めに応じて開示していく考え方が日本でも出てきており、98年に法制度化の動きが始まりました。 99年に入ってからは日本医師会が、原則的に診療記録の開示請求に応じる、としたガイドラインを発表 その後、文部省が国立大学付属病院における開示のガイドラインを発表したり、東京都や横浜市などの自治体病院でも開示に踏み切るなど、少しずつ具体化してきました。
2005年4月に施行された個人情報保護法により、5,000件を超すデータを持つ規模の医療機関にはカルテ開示が義務付けられたので、 大きな病院でのカルテ開示を請求することは患者の法律上の権利として守られています。

また、セカンドオピニオンを求める際の資料として、一度行った検査データなどの個人情報の提供を求めることも、 一般化してきました。 上記のように最近は日本医師会も診療記録の開示は当然とうたっているのですから、これも自信を持って行ってよいことです。
中には、本気でそう信じているのかどうかはわかりませんが、「法律で認められていない」と説明する医師もいるようですが、 決してそんなことはありませんので、簡単に諦める必要はありません。 患者が費用を支払った、自分のからだの情報であり、再び別の病院で同じ検査をするのは実に無駄なことですから、 ぜひ試みてみてください。
なお、転院するとき、システムとしてカルテも移動できるようになればそれにこしたことはありませんが、 現在は、系列病院でもないかぎり、そのようなことは行われていません。 かといって、一般的にいって、次にかかる医師の判断材料として、特にカルテがあったほうがベター、 ということもありませんから、カルテはあえて求めなくてもよいでしょう。
もちろん、ご自分が見たい、読みたいと思われるなら、それを申し出てみることは、からだのケアに自分から主体的に取り組む、 よいきっかけになるかもしれません。 また、MRI、CT検査の画像は借りることができるので、セカンドオピニオンを受ける際には、利用すると良いでしょう。 医師に申し出るよりは医事課のほうが言いやすいかもしれません。


9 たんぽぽを上手に生かして下さい

「たんぽぽ」の基本は、会員が互いに励ましあい、情報を分かち合うという、自助活動にあります。 あなたがサポートを求めて積極的に行動すれば、それに応える用意のある会員がたくさんいます。 まずは、立川、江戸川、横浜、松本、埼玉などで定期的に開かれている、おしゃべり会に足を運んでみてください。 もし会員になられたら『たんぽぽ通信』 に「自己紹介」や、体験記をお寄せください。インターネットにアクセスのある方なら、メーリングリスト「オンラインたんぽぽ」に参加されてもいいでしょう。 そして、あなたが、自分の住む地元でも会合を開きたいと思ったら、たんぽぽ事務局にご相談ください。 日にちと場所だけ決めて、「たんぽぽ通信」上で呼び掛ければ、きっと1人や2人、 或いはそれ以上の仲間がその会場に顔を出すことでしょう。

たんぽぽの活動目的は会をひたすら大きくすることではありません。 大きくなって顔の見えない関係を作るより、小さくてもちゃんと気持ちの通う場をもっともっと増やして いきたいと思います。 会が何かをしてくれるのを待つのではなく、「こういうサポートがほしい」と、積極的に声をあげてください。 自分がサポートを得たくて行動したことが、今度は誰かの役に立つこともあって、きっとあなたは、 「人の役に立つ」快さも、味わうことができると思います。
このような活動を通して、各自が子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症と、或いは病院、医師と上手につきあう方法を見つけ出す、 これが「たんぽぽ」の活動趣旨です。

たんぽぽの活動

たんぽぽでは、子宮筋腫や内膜症、腺筋症などの婦人科疾患の診断を受けた方が、互いに支えあい、 励ましあうためのさまざまな場を提供しています。
全ての活動は会員によるボランティアです。遠方にお住まいの方や、家事や仕事で忙しい方でも参加できる機会を設けるよう努力していますので、 ただ受け身で情報を受け取るだけでなく、ぜひ積極的に活動にご参加ください。

たんぽぽ応援のカンパをお願いします

たんぽぽのような顔の見える関係を大切にするセルフヘルプの活動は、SNS等の普及によって会員数が減少する傾向がありますが、社会的にはとても意義のある活動だと考えています。ぜひ私たちの活動を応援する意味でカンパをしていただきたく、ご協力よろしくお願いします。

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口座名:たんぽぽ

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★お知らせ★

たんぽぽでは、会員の方でも基本メールでのご相談は受けておりません。ぜひ月3回の電話相談をご利用ください。会員の方であれば納得できる答えが見つかるまで何度でもご利用できます。

たんぽぽに携帯からお問い合わせいただく場合、返信はPCからいたしますのでメールが届かない場合があります。たんぽぽのメールアドレスを「受信可能設定」にしておいていただきますよう、よろしくお願いいたします。

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