◎子宮筋腫 子宮内膜症 子宮腺筋症って?

子宮筋腫って?

子宮筋腫というのは、子宮にできる良性の腫瘍です(図1)。
できる場所や大きさによって、引き起こされる痛みや月経血の量、妊娠・出産への影響の出方に違いがあります。
症状のない人まで含めると、成人女性の3人から4人に1人が持っているといわれる、きわめてよくある腫瘍です。
だから、筋腫が見つかったからといって、直ちに「自分は病気だ」「すぐに手術しなくてはならない」とパニックする必要はないのです。
特に症状がなく、他の臓器を圧迫したり、不妊の原因になっていたりするのでなければ、しばらく放っておいても大事には至りません。

 

子宮内膜症って?

一方、子宮内膜症というのは、本来子宮の内側にある子宮内膜の細胞とよく似た細胞が子宮内壁以外で増殖して、 ホルモンの働きに反応して出血や炎症を引き起こしたりする疾患です(図2)。
よくあるのは、内膜症細胞が卵巣内で増殖して卵巣がはれ上がるチョコレート嚢腫や、 内膜症細胞がお腹の中の臓器の表面で増殖し、子宮と腸や卵巣が癒着して痛みを引き起こす腹膜病変。
ときには性交痛や不妊などの症状も伴います。成人女性の10人に1人にあるといわれています。

子宮腺筋症って?

子宮腺筋症というのも子宮内膜症の一種で、子宮筋層に内膜症細胞が霜降り状に入り込んで増殖し、 子宮の壁の一部がこぶのように硬くなったり、子宮全体が腫れてしまったりする疾患です(図3)。
かなり強い月経痛と過多月経(月経血の量が増える状態)を伴い、不妊の原因となることもあります。
内診やエコーだけでは判別が難しいので、当初の診断では筋腫といわれることもあります。
他の二つの病気に比べると耳慣れないかもしれませんが、こちらも無症状のものを含めると、 成人女性の5人に1人にあるといわれます。

 

ここで大事なことは?

ここで大事なことは、どれもそれだけで命にかかわるような病気ではないということです。
これらの診断を下されたからといってパニックする必要はありません。
ゆっくり時間をかけて、自分のからだについて勉強し、自分にもっとも合った治療を探していくことが可能です。
また、いずれの場合も閉経を迎えれば症状はたいてい解決します。
女性ホルモンが出ている間は付き合っていかなくてはならない一種の慢性疾患として捉え、 十分に時間をかけて対応していきましょう。

 

どのような症状があるのですか?

婦人科疾患の代表的な症状としては月経痛、過多月経、不正出血などがありますが、 強い月経痛はとくに内膜症と腺筋症の人に多く、過多月経や不正出血は筋腫と腺筋症の人に多いようです。

筋腫は、子宮の外側に出っ張る漿膜下筋腫、子宮の壁の中にできる筋層内筋腫、 子宮の内側に突き出す粘膜下筋腫の3種に大きく分けられます(図1)。
漿膜下筋腫がもっとも症状が少なく、握りこぶし程度の大きさになっても、無症状の人もいます。
筋層内筋腫では月経時の子宮の収縮がよくないために、痛みが出たり、だらだら出血が続いたりすることがあるようです。
粘膜下筋腫でも不正出血がありますが、とくに月経時は子宮内膜の面積が大きくなっているために、 過多月経(時に大量出血となる)になりがちで、貧血状態になることが少なくありません。
また、漿膜下筋腫でもあまり大きいと膀胱を圧迫して頻尿になったり、 後ろの方にあると腰痛を引き起こしたりということがあります。
最近は定期検診などで、自覚症状がない人にも筋腫が見つかりますが、 昔は大きな筋腫を抱えていながら全く気づかずに閉経期を迎えた人が大勢いたことでしょう。
内膜症・腺筋症では月経痛や過多月経に加え、月経以外のときの下腹部痛や、 性交痛や排便痛があります。
特に最後の2つが筋腫と見分ける際の手がかりになります。
ただし筋腫でも子宮口に近い位置にできているとセックスのときに押されて痛いこともあるようです。
内膜症も腺筋症も、症状もなく進行していく、ということは有り得ます。
内膜症は進行の度合いによって分類がされていますが、進んでいるからといってすごく痛い、というものではないようです。
ただ、内膜症・腺筋症が不妊の原因になることもありますから、なかなか妊娠しないという場合は、 症状がなくても内膜症や腺筋症を持っている可能性もあります。

 

 

筋腫と内膜症、腺筋症の区別は簡単ですか?

実際のところ、筋腫と内膜症、腺筋症を併発するケースも少なくありませんし、 腺筋症の中には内膜症組織が子宮の筋肉組織の中に筋腫のようなコブを形成するタイプのものもあり、 内診などの簡単な検査では判別は容易ではありません。
エコー(超音波診断装置)を使えばかなりのところまでわかりますが、 より正確にはCTスキャン(コンピュータ断層撮影法)、MRI(磁気共鳴画像診断)や血液検査(腫瘍マーカー)を 併せて行なって判断します。
内膜症の確定診断には腹腔鏡が必要ですが、傷口は小さいものの、 全身麻酔を用いて実際にからだにメスを入れる、かなり大掛かりな検査ですので、検査だけの目的ではなく、 同時に癒着をはがす、病巣をレーザーで焼くといった、治療的な処置も同時に行なうことが前提となります。

 

 

 

命に関わる病気ですか?

無症状のものまで含めると、筋腫は成人女性の4人に1人、内膜症は10人に1人、 腺筋症も5人に1人にあるといわれるほどポピュラーな疾患です。
いずれも良性疾患ですので、それだけで死に至るということは絶対にありません。
しかし、これらの病気は良性だからといって定期検診をうけずにほっておくと、 別の悪性の病気になっても発見が遅れる可能性がありますし、 子宮肉腫という怖い病気を筋腫と誤診することも稀にありますから、医師と相談の上、 定期的に検診を受けながら経過を観察することが必要です。

なお、特に改善を必要とする症状がなく、ただ経過観察だけをしていけばよい、という方も、 基礎体温の計測は自分のからだの状態を知るよい手がかりになるので続けていかれたほうがよいと思います。
また、月経の際の出血量が気になる人は、自分で使用したナプキンの重さを量って、新しいナプキンの重量を差し引いて計算し、 1周期分を足し合わせた重さを算出するとよいでしょう。
個人差はありますが、おおよその目安は120g。
毎月300gも出血している、という人は自分では気づいていなくても貧血になっている可能性があるので、 血液検査を受けたほうがよいでしょう。

 

 

 

どのような病気ですか?

第一に子宮筋腫は大体成人女性の4人に1人に見られるもので、歳をとったらお肌にしわやしみができるのと同じような、加齢とともに多くの人に起きる現象です。
なんの症状もなく他臓器への影響も認められない場合は、検診で「筋腫がある」とわかったというだけで、直ちに治療の対象とする必要はありません。
内膜症の場合は逆に、確定診断が難しいことから、症状がないのに検診でいきなり見つかるということはあまりないかもしれませんが、 これも症状がないなら筋腫と同様、それが不妊の原因になっていたり、卵巣嚢腫が破裂したり捻転したりする危険性があるほど大きくなっていたりするのでない限り (6~7cmが目安と言われますが、それ以下なら絶対に捻転や破裂がないわけではありません)は起こりますし、即座に医療的な介入を必要とする、というものではありません。
そういう場合は経過観察しながら、食事内容や生活のパターンを見直し、筋腫の増大や内膜症の進行をなるべく遅らせるよう努力することもできるでしょう。

では積極的な治療が必要な症状とはどんなものでしょうか?
市販の鎮痛剤などでは抑えきれないような月経痛や性交痛、月経過多による慢性的な貧血、 不正出血、内膜症による卵管癒着や筋腫・腺筋症による卵管圧迫や子宮変形などが原因の不妊、 また大型の筋腫による他臓器圧迫が原因の諸症状(ひどい頻尿、尿閉、腰痛など)です。
月経痛や過多月経があるからといって、それだけで「さあ、手術」「では、ホルモンを」というわけではなく、それらの症状の原因が本当に筋腫や内膜症、 腺筋症であることを特定するための検査を十分に行なった上で、どのような治療をすべきかの判断が必要です。
そうでないと、手術をしたのに全然よくならない、という結果になることがあるからです。
検査についても、きちんと説明を受けた上で納得して受けるようにし、その結果を十分に理解した上で、どの治療を受けるか、自分で選びとることが必要です。

西洋医学の発想で「根治療法」というときは、「病の根源を絶つ」ということになります。
そういう意味では子宮筋腫(や子宮腺筋症)の根治療法というのは「子宮全摘出」しかない(!)ということになります。
というのは筋腫の場合、今できている筋腫核だけ取り除いても、また別の筋腫の芽が大きくなって再発する可能性があるからです。
でも、虫歯を治療してもまた別の歯が虫歯になるかもしれないからといって、歯を全部抜いて入れ歯にする人はいませんよね。
女性にとって重要な意味をもつ臓器を取ってしまって、「はい、これであなたは健康です」と言われても困りますよね。

さらに内膜症の場合は子宮を取っても、卵巣から女性ホルモンが分泌されていれば、子宮以外のところにある内膜症組織の増殖は続きます。
つまり、月経はなくなっても腹腔内に残った病巣の再燃やチョコレート嚢腫の再発を完全に予防することはできないわけで、 卵巣も取ってしまわないと「根治」はできないということになります。
しかし、卵巣を取ってしまえばいきなり更年期になってしまうのと同じですから、ホルモンを補充しないとのぼせなどの症状が出たり、 骨粗鬆症や心疾患のリスクが出てきたりします。
つまり、内膜症は退治できても、新たな敵と戦わなくてはならないわけです。

だからといって、子宮や卵巣を取らないと治らないのか、と絶望する必要はありません。たとえ病巣が残っていても、症状を抑える可能性はあるからです。
つまり、筋腫や内膜症の治療というのは、基本的には「根治する」ということより「今自分を悩ませている症状を抑え、最大限に日常生活を楽しめるようにする」 ということに本質がある、という考え方をすることで、東洋医学や代替医療など選択肢はぐっと広がります。
西洋医学でも、ホルモン療法などは、病気の根本的な解決をもたらすわけではなく、一時的に症状を軽減するだけの一種の対症療法です。
しかもホルモン薬は、骨量の減少などの副作用がありますから継続使用ができません。
それで一旦休薬すると、また数ヵ月のうちに病巣が元通りになって症状がぶり返すこともあります。
そういう意味では、手術やホルモン薬のような西洋医学だけでなく、漢方のような緩和ケア法や食事療法のような生活療法も十分に検討する価値があるのが、 子宮筋腫や子宮内膜症といった良性婦人科疾患の特徴だと言えます。

ただし、漢方や民間療法などで筋腫や内膜症が「なくなった」「完治した」といった話をよく耳にしますが、こうした現象は科学的には確認されていません。
対症療法が効いて辛い症状がなくなった、というだけで、病巣がなくなっているかどうかの確認をしていない場合もありますし、 臨床診断で筋腫、内膜症と診断されていても実は機能性の(つまり病理的な異常がない)月経困難症だった、というケースもありえます。
中にはたまたま閉経期にかかっていて、筋腫も内膜症も閉経が原因で病巣が萎縮した、というケースもあるかもしれません。

たとえ上記のようなケースで患部が消滅していなくても、生活の質が向上しているのなら、もちろん「治った」といって構わないわけですが、 逆に必ずそういう(たとえば健康食品で筋腫が排出されるなどの)効果が出るものと期待すると、がっかりすることもあるかもしれませんので、その点を留意して下さい。

以上のことを踏まえた上で、現在特にひどい症状がない人は生活療法の項を、からだに大きな負担をかけないで症状を軽減することを望んでいる方は、 生活療法に加えて漢方療法の項を、さらに生活療法や漢方療法で症状の改善が見られず、もう一歩踏み込んだ形での治療を望んでいる方は 外科的療法・UAEとFUSおよびホルモン療法の項を参照して下さい。

 

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