漢方療法は、健康保険の適用も認められている「薬物療法」のひとつです。
長い間主流だった伝統医学「漢方」が、西洋医学に取って代わられたのは明治7年です。
そのとき、西洋医学を修めたものに医師免許が与えられ、漢方医学は主流からはずされました。
しかしながら近年の漢方ブームもあり、2001年、文部科学省より医学教育のガイドライン「医学教育モデル・コア・カリキュラム」が発表され、 全国の大学医学部・医科大学に「漢方医学教育」導入の必要性が指摘されました。
医学部6年間で『和漢薬を概説できる』という項目が掲げられ、漢方の勉強が必須となったわけです。
カリキュラムは2002年度より実施され、2004年度には全国に80ある大学医学部・医科大学の全てで漢方医学教育が実施されました。
それに伴い漢方外来を設置する病院が大幅に増えました。
また、同年に厚生労働省が「医療機関の広告規制の緩和」を行ったため、厚生労働大臣に届出がなされた団体の認定する 資格名が広告できることとなりました。
漢方に関しては(社)日本東洋医学会が認定する「漢方専門医」として、広告できるようになりました。
実際には「漢方専門医」の認定を持っていなくても、漢方薬を処方する医師はたくさんいると思われます。
このように、ここ数年で漢方薬はますます私たちの身近になったわけです。 子宮筋腫や子宮内膜症などを抱えている私たちも選択肢の一つとして考えても良いのではないでしょうか。
では、症状をとるために漢方薬を選ぶには、具体的にどうしたらよいでしょう?
病院と薬局の2種類の方法があることも、保険で入手するには病院にかかる必要があるのも、西洋薬と同じです。 違う点は、冒頭に説明したような事情から、漢方薬を日常的に診療に取り入れている医師と、取り入れていない医師がいたり、 薬局でも扱っているところとそうでないところがあるなどです。保険で入手できる漢方薬には、選択肢として、生薬(煎じ薬)と、
そのまま飲めるように加工された薬(その多くは、フリーズドライ製法によるエキス剤)の2種類があり、 生薬のほうがより効果が高いといわれていますが、これを処方できる人は、医師も薬剤師も限られています。 ただし、エキス剤でも処方がうまくいけばかなりの効果を得られるので、エキス剤の処方の経験が豊富な婦人科医にかかり、
保険で入手するのが、最も一般的な方法でしょう。エキス剤でも、ただ水で飲み下すのではなく、 お湯に溶いて飲むとより効き目があるといわれています。
漢方薬の選び方、使い方は、西洋医学における薬の選び方、使い方と違うので、その基礎知識をもつことは重要です。 最も大きな違いは、漢方の場合は、病名に合わせて選ぶのではなく、当人の体質に合わせて選ぶ、という点です。 子宮筋腫のできている場所や大きさが似ている人でも、どの薬が合っているかは異なり、そればかりか、体質に合わないと、
それが原因で副作用を起こすこともあります。体質は、大きく分けて、どちらかというと頑健なタイプの「実証」と、 どちらかというと虚弱なタイプの「虚証」(きょしょう)に分かれ、中には中間証や、判断の難しいタイプの人もいます。
漢方の解釈では、筋腫や内膜症で起きるような月経トラブルは、「瘀血」(おけつ)という、 「血の滞り」がもとで起きるととらえられており、治療には一般に「駆瘀血剤」(くおけつざい) という種類の薬がよく使われます。その代表的な薬が、 実証では「桂枝茯苓丸」(けいしぶくりょうがん)、 虚証では「当帰芍薬散」(とうきしゃくやくさん)
で、この2つは非常によく処方され、また実際に痛みが軽減された、などの効果を得た、という人も少なくありません。 ただし、本格的な漢方処方では、体質の診断に陰陽や気血水などの要素が加味されるので、もっと多彩な処方があります。 処方されることの多いものには、 「加味逍遥散」(かみしょうようさん)、「桃核承気湯」(とうかくじょうきとう)、
「芍薬甘草湯」(しゃくやくかんぞうとう)、「折衝飲」(せっしょういん)などがあり、 それぞれ痛みに対してよく処方されますが、どんな人、どんなケースに処方されるかは、微妙に違います。
漢方薬は「長く飲まないと効かない」とか、西洋薬と比べ「ゆっくり効いて作用もおだやか」と思われがちですが、 体質や体調にあった薬なら、1~2週間ぐらいから効果が現れます。 その一方、処方や使い方を誤れば、副作用も起こります。もし処方された薬について「合わない」と感じるようなら、
医師に申し出て、別の薬に変えてみるのがよいこともあります。ただし、漢方薬は、処方する人によって出す薬が異なることがよくあり、 その効果もかなり違います。 漢方薬は、現在の医療の中では「オプション」としての選択肢ですが、これに大きな期待をかけるなら、 処方者を選ぶことも大切になってきます。
どこに経験豊富な医師がいるかを知るのは簡単ではありませんが、1つの方法として、漢方薬の会社
エキス剤のメーカーなら、
ツムラTEL03-3221-9700、
小太郎漢方製薬TEL0088-25-1198など、
生薬のメーカーなら、
ウチダ和漢薬 TEL03-3806-3846、
栃本天海堂 TEL072-826-0269、
松浦漢方 TEL052-883-5131
などに問い合わせして、自分の住む地元のどこの病院、産婦人科医院、薬局などに卸しているかを聞く、というやり方があります。
漢方療法は、血行をよくしたり、温めたり、からだに取り入れるもの(食事)を補正したりする効果をもっています。 ですから、血行に悪かったり、からだを冷やしたりする生活習慣、バランスのわるい食生活などを改めずに、 漢方薬にばかり頼ろうとするのでは本末転倒です。漢方療法に期待をかけるなら、 食事療法、生活療法の考え方やノウハウも知って、生活全体を見直すことも大切です。