高周波電気メスやレーザーを使って腹腔内の病巣を焼いたり、癒着している部分 (特に卵巣・卵管や直腸と子宮の間のダグラス窩と呼ばれる部分)を剥がすことにより、 月経痛などの症状を軽減し、妊娠しやすくすることができます。 近年は腹腔鏡を使って行なうことが多くなってきていますが、凍結骨盤(フローズンペルヴィス)といわれるような、 極度に骨盤内の癒着が激しく、臓器が一かたまりになってしまっているような場合や、 病巣が動脈や膀胱などに接している場合は、高度な技術を要するので、開腹した方が安全であるといえます。 これも他の治療法と同様、再発が一般的なので、あくまでも一時的な緩和を目的としたものであることを十分に 理解しておくことが必要です。 また、月経痛対策としては、仙骨子宮靭帯切断術という治療法もあります。
子宮内膜症の中でも、卵巣の中に内膜組織が増殖する、チョコレート嚢胞で、卵巣が大きく腫れてきたり (5~6センチ程度が目安)、癒着や不妊の原因になっている場合に行われる保存的手術です。 卵巣に針のようなものを刺して嚢腫の中の嚢胞液を吸引した上で、病変のある嚢胞を袋ごと取り出して、 卵巣を修復するという方法で、再発率は次に説明するアルコール固定よりは低くなります。 また、術中の細胞診によって悪性かどうかの鑑別がつくという利点があるほか、癒着の剥離なども同時に行なえるため、 痛みなどの症状の軽減にも役に立つと思われます。腹腔鏡下で行なうことも可能ですが、 卵巣が7~8センチ以上の大きさになっていたり、ひどく癒着していて可動性が低い場合は、開腹で行なうことが多いようです。
チョコレート嚢腫の場合に用いられるもう一つの手法で、超音波モニターで監視しながら腟から (あるいはお腹に小さな穴を開けて腹腔鏡を用いて)、針のようなものを入れて卵巣に刺し、 嚢腫の嚢胞液を吸引した後、純エタノールを入れて固定するという、日本だけで行われている術式です。 最大の利点は開腹しないので、からだへの負担が少ないことです。 その一方で、アルコールが卵巣の外に漏れたりすると、新たな癒着を引き起こすこともあります。 また、術中の細胞診ができないので、もし良性ではなく卵巣がんであった場合、 それと知らずに周囲にがん細胞をばらまいてしまう可能性があるので、事前の鑑別診断が非常に大切になります。 超音波、CTあるいはMRIなどを用いて総合判定をし、 固定したあとはすぐ吸引液の細胞診を行なってがんではないことを確認することが必要です。 卵巣嚢腫の他にも腹腔内に病巣を持っている場合は、アルコール固定だけで症状が軽減されるとは限りませんし、 再発の可能性もありますので、他の治療法と十分に比較検討して選択しましょう。
チョコレート嚢腫が破裂したり、茎捻転を起こして壊死を起こしたりした場合、 また嚢腫が大きくて正常な組織が残せそうにない場合、悪性の疑いがある場合など、 病変のある卵巣を丸ごと(ときには卵管も)摘出することがあります。 2つある卵巣のうちの1つを取ってしまったら、分泌される女性ホルモンの量も半分になってしまうのでは? と心配になる方もおられると思いますが、通常、残ったほうの卵巣がちゃんと2つ分の機能を果たしますので、 毎月排卵も月経も起き、妊娠も可能です。 ただ、残った卵巣にも病変がある場合や、同時に子宮全摘術を行なう場合には、 ホルモン分泌に異常が出ることがありますので、慎重な判断が求められます。
月経痛や過多月経などの症状が強く、癒着の剥離や腹腔内の内膜症病巣の焼灼だけでは症状が解決できない場合、 あるいは何度も再発してこれ以上手術を繰り返すことは避けたい場合などは、 生活の質の向上を考えると子宮全摘も選択の一つに入ってきます(これを「準根治手術」と呼ぶ)。 しかし、先にも述べたように内膜組織は女性ホルモンの供給がある限り増殖しつづけますから、子宮の外にも病巣がある場合は、 両卵巣を摘出しなければ完全に治すことはできません。 腹腔内に散らばっている病巣が原因となっている下腹部痛や排便痛はなくならない可能性があるからです。 とはいえ、卵巣を残しておいても、子宮を全摘すれば過多月経やそれによって引き起こされる貧血などの症状は解決できますし、 腹腔内の病巣が少なければさほどの悪影響はないかもしれませんので、卵巣を摘出した場合のデメリット (更年期障害が起きるので、ホルモン補充療法が必要となる)を計算して、 少なくとも片卵巣を残すかどうかの判断をすることが必要でしょう (その他、手術の実際については子宮筋腫の全摘の項を参照して下さい)。