子宮筋腫のホルモン療法

子宮内膜症に適応のホルモン療法3種類
(1)ピルによる偽妊娠療法、(2)ダナゾール療法、(3)GnRHアゴニスト療法(GnRHアナログ)のうち、子宮筋腫にも適応が認められているのは(ゾラデックスを除く)GnRHアゴニスト療法(GnRHアナログ)だけです。
(1)や(2)も月経痛や過多月経、貧血に対する効果があるので、子宮筋腫の診断を受けている人がそれらを処方され、使用しているケースもあります。 しかし、これは健康保険の取り扱い上は異例のことですから、医師がその薬を処方する理由を確認しましょう。医師が子宮内膜症を疑っているケースもあると思われます。
なお、偽妊娠療法の低用量ピルは、筋腫を持つ人には「禁忌」(使用してならない)とされています。 しかし、不思議なことに、筋腫に影響を及ぼすとされるエストロゲンの含有量がもっと多い中用量ピルは「慎重投与」とされており、矛盾があります。 とはいえ、低用量ピルには筋腫そのものを縮小させるような効果はありませんから、内膜症・腺筋症との合併があって辛い症状の主原因は筋腫ではない、 という場合以外は、偽妊娠療法はお勧めできません。

 

GnRHアゴニスト(アナログ)療法

GnRHアゴニスト療法は卵巣機能を抑えて月経をとめる、偽閉経療法です。その仕組みについては内膜症のホルモン療法の項を参照してください。 現在、スプレキュア、ナサニール、リュープリンの3種が筋腫の適応になっていますが、ゾラデックスは今のところ内膜症のみの適応で、筋腫には適応になっていません。 下腹部痛や貧血など、月経にまつわる症状がある場合は、一時的に改善することができ、 多くの場合筋腫のサイズも縮小するので、腰痛や圧迫症状にも効果が見られます。

しかし、最長6ヵ月の使用を終了したのちは、症状、筋腫の大きさとも元に戻ることが多く、 短期間にのみ有効な「対症療法」です。さらに骨量の低下を始め、肝機能障害や糖尿病の悪化など重篤な副作用も少なくありません。 子宮筋腫で症状の強い人は多数派ではなく、多くは漢方療法や生活療法に加え、症状が辛いときだけ鎮痛剤を上手に使えば、 ふつうに生活できるという方です。そういう人にGnRHアゴニストのように強い薬はメリットが少ないといえます。 そのため、製薬会社も「手術までの保存療法並びに閉経前の保存療法としての適用を原則」としています。

かなり強い症状に悩まされている方が、気持ちの上で手術に踏み切れない、 あるいは仕事や家庭の事情ですぐに手術できないというときの時間稼ぎには有効です。月経が止まりますから、 過多月経や貧血などの改善にはつながります。同時に、筋腫が縮小することで手術がしやすくなりますし、 子宮の血流量自体が減るので術中の出血量を抑えることもできます。手術を前提として使用する場合は、最低3ヵ月、通常歯4ヵ月の使用で効果が出ますので、 なるべくそのあと時間を空けずに手術を受けた方がいいでしょう。

ただし、GnRHアゴニストを使ってもほとんど縮小しない筋腫もあります。筋腫への血流が少なかったり、 変性を起こしていたりする場合は効果が少ないので、手術をするからといって必ずしも事前にGnRHアゴニストを使用する必要はありません。 また、子宮の内側に筋腫ができる粘膜下筋腫の場合は、GnRHアゴニストを使うと大出血を起こしやすくなるため、その使用には慎重を期す必要があります。

使用する期間については、手術を前提としている場合は3~4ヵ月の使用で十分ですが、症状緩和のために長く使用したいという場合は、 6ヵ月までは継続使用できます。閉経年齢(平均51歳)に近いかたの場合、「逃げ込み療法」といって、 ホルモン療法を数クール行なううちに本物の閉経にもちこむ、というやり方もありますが、そういう場合も1クール終えた後は、 次の投薬までに半年程度の休薬期間をおくことが必要です。中には、1日の使用量を減らすことで使用期間を延ばす人もいます。

このように手術を前提とせず、長期にわたって使用する場合は、 事前に十分な検査を重ね、悪性腫瘍(肉腫)の疑いを否定する必要があります。 また、更年期には、ホルモン療法をしなくても、骨量の低下が進み、血栓症や心疾患のリスクが高くなりますので、逃げ込み療法で使用される場合は定期的に骨量、 肝機能、血液凝固系の検査を行なうのが理想的です。
GnRH療法の個々の薬剤についての具体的な説明については、内膜症の項(aP19)をご参照下さい。 ただし、リュープリンの場合は、筋腫と内膜症で使用する薬の用量に違いがあります。内膜症では通常3.75mgを使用し、 体重が50kg未満の方の場合は1.88mgでもよいとされているのですが、筋腫の場合は通常の用量が1.88mgで、 体重の重い患者や子宮が相当大きい患者の場合には3.75mgを投与する、ということになっていますので、その点をご注意ください。

逃げ込み療法について

「逃げ込み療法」という名前に、1~2クールの使用で確実に閉経して手術は回避できると思ってしまう (あるいは思いこまされている)人もいるようですが、現実にはGnRHアゴニストを使って実際に閉経に移行して手術が回避できる率はおよそ3割です。 1~2クールで閉経してくれれば骨量減少の心配もそれほどありませんが、中には8クールも使用してようやく閉経に至ったという人もいます。 45歳以上で月経周期3~5日目のFSH(卵胞刺激ホルモン)の値が25mIU/ml以上の患者では、1クールの使用で9割が閉経したという報告があり 、一つのヒントにはなるかもしれませんが、あまり過大な期待を抱かずに、骨量が骨粗しょう症の危険域に入っている場合は、手術を含む他の選択肢も考慮しましょう。

ホルモン療法についての説明はこれでおわりです。

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